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世話人

東京慈恵会医科大学名誉教授
新村眞人

慶應義塾大学医学部先端医科学研究所教授
佐谷秀行

御挨拶

日本のレックリングハウゼン病患者数は、約4万人と推定されており、優性遺伝性の疾患としては、数が多いものである。しかし、医師の多くがこの病気に関する正しい知識を持っていないのが現状であって、患者が医師を訪れても満足のいく説明をしてもらえず、治療法は無いからと何もしてもらえない。多くの患者さんは沢山の不安や悩みを抱えながら、見放されてしまったという感情をいだき、病院に行くことをあきらめてしまうのである。

レックリングハウゼン病の患者にみられる症候は多彩であり、それぞれの症状の程度の差も大きく、個々の症例によって大きく異なるものである。普通は痛くも痒くもなく、何でも自分ですることができるが、皆と一緒にお風呂に入ることができない。外見上の問題がいかに患者さんの心を傷つけ、想像以上に大きな問題になっているかを、よく理解する必要がある。

突然変異でカフェ・オ・レ斑のある子供が生まれた場合、レックリングハウゼン病と診断する時に、重症例の写真を親に見せて不必要な心配をかけることは、愚かなことである。また、いたずらに画像検査などを繰り返すことは、無駄なことである。遺伝性の疾患であるということも大きな問題である。結婚の問題、子供に遺伝した親が責任を感じてしまうという感情、カフェ・オ・レ斑のある子供がいる場合、次に生まれる子供の有病率はどの程度かなど、遺伝相談についての対応も十分に出来るようにしておくことが必要である。また、倫理的な問題や遺伝子検査技術の確実性、安全性などに十分考慮しなければならないが、病気の遺伝していない子供を産むこともできればそれにこしたことはないので、受精卵診断、出生前診断についても真剣に考えておく時期にきている。

レックリングハウゼン病の患者は、どこの病院に行って、どの先生に診てもらえばよいのかがわからない。情報として、専門家のリストを作っておくことが必要であるが、これがなかなか難かしく、出来上がっていない。それぞれの症候についての各科の専門家、レックリングハウゼン病の専門家がほとんどいないし、どこにおられるかがわからないのである。この点に関しては、日本は諸外国に較べて大きく遅れをとってしまった。これに加えて、昨今のインターネットによる情報の過多により、患者は正しい情報を取捨することが出来ず、いたずらに右往左往するだけになってしまった。

こうした現状に鑑み、日本の医学・医療界におけるレックリングハウゼン病に関する知識を高めるためには、臨床医、基礎医学研究者、遺伝カウンセラーをはじめとする看護師などによる医学会を設立する必要があり、皆で勉強を重ねていくほかに方法はないと考えた。茲に一粒の種を蒔いたが、これがやがて実を結んでくれることを望んでいる。皆様のお力添えをお願い申し上げる次第である。

平成21年7月  東京慈恵会医科大学 名誉教授 新村眞人